マウスピース選びって、だいたい「先輩がこれ使ってる」「先生に勧められた」で始まります。もちろんそれも正解。でも、ユーフォニアムは音色の守備範囲が広いぶん、マウスピースの“性格”が合奏の結果に大きく関係してきます。
音程が合わなかったり、音質はもちろん、吹奏感など楽器本体と同じぐらいマウスピースは重要な要素です。
この記事は、型番の話をいったん脇に置いて、まずブランドごとの背景(どういう現場から生まれたのか/何を大事にしているのか)を整理するコラムです。ブランドそれぞれの考え方と特徴が頭に入ると、試奏するときに「何を比べればいいか」が一気に分かりやすくなります。
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ユーフォニアム用マウスピース主要ブランド一覧
| ブランド | ルーツのイメージ | ユーフォ奏者に刺さりやすいポイント |
|---|---|---|
| Denis Wick | 英国(オーケストラ〜ブラスバンド文化) | “英国っぽい歌い方”と扱いやすさの両立 |
| Alliance | 英国(ブラスバンド由来) | きれいな仕上げ・揃いの良さ、シグネチャー展開 |
| Vincent Bach | 米国(標準・基準として語られがち) | 他社比較の物差しになりやすい、癖が少ない方向 |
| YAMAHA | 日本(量産品質と研究開発) | 個体差が少なく、入口として安心しやすい |
| Schilke | 米国(職人×プレイヤーの設計) | 反応の良さ、輪郭のはっきりした吹奏感を求める人に |
| Warburton | 北米(モジュラー思想) | 口当たりと鳴り方を“部品で調整”したい人向け |
| Doug Elliott | 北米(奏者目線のセミオーダー) | 自分に合わせた微調整を段階的に詰めたい人に |
| Greg Black | 米国(NY系カスタムの流れ) | 王道の吹奏感をベースに、細部を作り込む |
| JK(Josef Klier) | 独系(精密さと系譜の長さ) | “きっちり整う感じ”が好きな人に合いやすい |
| Bruno Tilz | 独系(工房・手仕事) | 豊富なラインと、きめ細かい作り込み |
| Giddings & Webster | 米国(ステンレス/チタン) | 金属アレルギーや耐久性で選びたい人にも選択肢 |
ここから先は、各ブランドを「歴史→特徴→向いている人」の順で見ていきます。
まずは“形のどこが音に効くか”だけ押さえる
マウスピースの言葉が多すぎて混乱しがちなので、ユーフォで体感しやすい要点だけに絞ります。
- リム:唇が当たるフチ。丸い/角が立つで“当たり”と持久力が変わる
- カップ:くぼみ。深さ・形で、音の太さや明るさの方向性が動く
- スロート:カップの底の穴。息の流れ(抵抗感)や音の立ち上がりに関係
- バックボア:スロートの先の広がり。響き方や遠鳴り、音のまとまりに影響
難しい計算より、「今の自分が困っている症状」に当てはめて見るのが早いです。例えば“高音が詰まる”“低音が散る”“音程が揺れる”など。
事故が多いのはシャンク(太管・細管・中細管)
マウスピースは、どんなに評判が良くてもシャンクが合わないと話が進みません。ユーフォは太管(ラージシャンク)を使うことが多い一方、楽器や年代によって細管(スモールシャンク)もありますし、
流通量は少ないですが中細管というものあります。
- 迷ったら、まず自分の楽器の差し込み口(レシーバー)を確認
- きついのに押し込む/ゆるいのに無理に固定するのはNG(抜けなくなったり、傷になったりします)
- “European shank”など別規格表記もあるので、購入前に必ず仕様を見る
ここを押さえたら、ようやくブランドの話に入れます。
Denis Wick(デニス・ウィック)

歴史:奏者の「現場の困りごと」から始まった
Denis Wickは、ロンドン交響楽団の仲間たちのニーズを満たすため、1968年にミュートとマウスピースを作り始めた、と公式に説明されています。当時は“音程が合うミュート”や“必要な音色を作れるマウスピース”が見つけにくかった、という背景も書かれています。
特徴:音色の「英国らしさ」を現代の吹きやすさに落とす
Denis Wickは、いまや金管アクセサリーの大手として世界中に流通していること、工房がドーセット(Hamworthy, Dorset)にあることなども公式ページに記載があります。
ユーフォ界隈では、同社がソリストと共同でラインを育てている点も見逃せません。Steven Mead本人が、クラシックなモデルから“Ultra”モデルへの設計の変遷を語る記事も公開されています。Denis Wick Products Ltd.+1
向いている人
- ブラスバンド系の“歌う音”に寄せたい
- 音色は太くしたいけど、レスポンスも落としたくない
- ソロと合奏を1本でやりたい(方向性の中心に置きたい)
Alliance(アライアンス)

歴史:Besson向けのアイデアから2006年に登場
Allianceの紹介ページでは、当初はBessonの金管向けマウスピースを作る考えで開発が始まり、2006年にDr Roger Websterが市場投入したと説明されています。開発にはJames GourlayやSteven Meadなど、著名な奏者の助言があったことも明記されています。
特徴:仕上げと揃いの良さ、シグネチャー展開
同じページ内で、Allianceは“仕上げと製造の一貫性”が強みで、温かさ・輝き・音の飛び(投射感)を併せ持ち、現代のバンド/オーケストラに合う、と紹介されています。またMade in Englandで、レザーポーチと箱に入れて提供される、といった“作り手の姿勢”が素晴らしいブランドです。
向いている人
- 合奏で前に飛ぶ音が欲しい(でもガサつきたくない)
- “同じ型番なら同じ感触”を期待したい
- 奏者監修モデル(シグネチャー)で方向性を決めたい
Vincent Bach(バック)

歴史:1918年創業、「精密さ」と「音楽性」の両立を掲げる
Conn Selmerのブランド紹介では、Bachは1918年にVincent Bachが創業し、エンジニアとしての技術と演奏家としての経験を組み合わせてマウスピースや金管を作った、と説明されています。
またBach Brassの年表では、1925年に最初のBachトランペットが販売された(2025年で100年)という節が用意されています。
特徴:いろいろな比較の“基準点”になりやすい
Bachは「このカップ形状・リム径を基準に他社を考える」という使われ方が多く、マウスピースの会話で“共通言語”になりやすいブランドです。極端な個性で引っ張るというより、奏者が音を作れる余地を残すタイプ、と捉えると分かりやすいです。
向いている人
- まず標準的な基準を持って、そこから好みを詰めたい
- 先生や先輩とサイズ感の会話を合わせたい
- 吹奏楽〜一般楽団で、クセの少ない方向を探している
YAMAHA(ヤマハ)

歴史:研究開発と“同じものが同じように出来る”を武器にしたメーカー
ヤマハの風楽器カタログ(2006年版)では、1887年に創業者・山葉寅楠が浜松でリードオルガン製造を始めたこと、そして1965年に「Yamaha」の名を冠した最初の管楽器を共同開発した、という流れが紹介されています。さらに、設計スタッフを専任で抱え、各国の演奏家と連携しながら継続的に研究開発(R&D)すること、部品加工の精度と一貫性を重視していることも同資料内で触れられています。
特徴:標準シリーズが“比較の基準”になりやすい
同カタログでは、Standard Series(標準シリーズ)のマウスピースは「先進的なコンピュータ設計と製造技術」による高い精度、スムーズなアタック、安定したコントロール、吹きやすさを特徴として挙げています。さらに100種類以上の構成がある、とも書かれています。
学生〜一般楽団だと、まずここを基準点にして「もう少し太く」「もう少し明るく」「もう少し楽に」と詰めていく流れが作りやすいです。
ユーフォでよく出てくる番手:51D〜55あたりの見え方
同カタログの表には、トロンボーン/ユーフォニアム(ラージシャンク)として 51D・52・53・54・55 などが並び、リム内径の数値も掲載されています(例:51D=25.24mm、54=26.15mm など)。
「番手が大きいほど=内径が大きい」方向なので、ざっくり言えば、
- もう少し楽に鳴らしたい/音を太くしたい → 大きい番手に興味が出やすい
- まずはまとまりと操作性を優先したい → いまの番手を基準に微調整
という考え方ができます(※ただし、内径だけで全ては決まりません)。
向いている人
- まず“失敗しにくい基準”を作ってから、好みを詰めたい
- 学校備品や貸し出しでも、個体差で振り回されたくない
- 合奏での音程やコントロールを整えるところから始めたい
Schilke(シルキー)

歴史:1956年創業、奏者×職人の設計思想
Schilkeは公式サイトで、1956年にシカゴ交響楽団在籍中のRenold O. Schilkeが創業した、と説明しています。また、伝統的な手仕事と現代技術を組み合わせ、仕様に合わせてマウスピースを作る姿勢も掲げています。
特徴:反応が速く、輪郭が出やすい方向に振れやすい
ユーフォで語られるSchilkeは「息を入れた瞬間の反応がいい」「芯が見える」といった評価が多い印象です。合奏で輪郭を出したい人、アタックの立ち上がりを揃えたい人は相性が良いことがあります。
一方で、音色の“丸さ”を最優先したい人は、少し角が立って感じることもあるので、ここは試奏で判断が早いです。
向いている人
- 音の芯・立ち上がりをはっきりさせたい
- 速いパッセージでも発音がぼやけたくない
- バンドの中で埋もれやすい悩みがある
Warburton(ワーバートン)

歴史:1974年からの“モダンな道具”づくり
Warburtonは公式サイトで「World Class Brass since 1974」と掲げ、ユーフォを含む各金管向けマウスピースを製造している、と説明しています。
特徴:モジュラー思想(組み合わせで最適化する)
Warburtonのシステムは、リム径・カップ形状/深さ・バックボアを組み合わせて、音と抵抗感のバランスを取る設計だと説明されています。トップ(TOP)とバックボア(BACKBORE)が互換になる二分割システム、という書き方もされています。
また同社サイト上では、トロンボーン/ユーフォ向けに「ONE PIECE MODELS」や「Soloist Euphonium Line」などのカテゴリも用意されています。
向いている人
- “当たり(リムの感触)”は好きだけど、抵抗感だけ変えたい
- 1本で全部より、用途に合わせて調整したい
- フィッティング(合わせ込み)自体を楽しめる
Doug Elliott(ダグ・エリオット)

歴史:1981年から設計・製造、三分割システムを発展させた
Online Trombone Journalのインタビューでは、Doug Elliottが1981年からトロンボーン/ユーフォ/チューバ向けのマウスピースを設計・製造してます。さらに、三分割システムの発想は「スクリューリム」と「スクリューシャンク」などから着想した、と本人が語っています。
特徴:段階的に“自分に寄せる”セミオーダー感
Doug Elliottは「一気に買い替えて大外し」よりも、リム→カップ→シャンクの順で“少しずつ寄せる”のが得意です。学生の時期は体の変化や吹き方も変わるので、こういう段階的な調整が刺さる人もいます。
向いている人
- 口当たりはキープして、音色や抵抗だけを変えたい
- 長期目線で、自分の“最適解”を探したい
- 先生や先輩と相談しながら、論理的に詰めたい
Greg Black(グレッグ・ブラック)

歴史:NYの名工系譜を引くカスタム、1985年から
Greg Black Mouthpiecesは公式ページで「クラシックなNYCのマウスピースメーカーの伝統」に連なること、そして1985年から手作業で精密なマウスピースを作ってきたことを掲げています。2019年にBenjamin Stricklandがビジネスマネージャー兼見習いとして加わった、という記載もあります。
特徴:王道の吹奏感を土台に、細部の作り込み
Greg Blackは“オーダー対応”の色が強く、狙ったニュアンスに寄せる調整幅が広いブランドです。合奏でもソロでも「ここだけもう少し」を詰めたい人に向きます。
向いている人
- いまの吹奏感は好きだけど、あと一歩を詰めたい
- カスタムや相談込みで“作り込む”のが好き
- 長く使える一本を育てたい
まとめ
ユーフォニアムのマウスピースは、「どれが正解」ではなく「自分の悩みを一番減らせる道具」を探す世界です。
だからこそ、ブランドの歴史や作り方を知っておくと、試奏の効率が一気に上がります。
意識しなければならないことは、自分と普段吹くユーフォニアムの間にある重要なパーツと言うことです。
マウスピースと自分との相性はもちろんですが、それに加えて普段使用しているユーフォニアムとの相性も同様に重要です。また、本体よりも個体差が出にくい楽器とはいえ、鉄を削り出して作る都合上、削るための刃が摩耗して個体差も発生します、特に入門と言われる通常のマウスピースはこの個体差が出やすいもの取ります。
できれば自分の普段使用している楽器と、できなければ近いタイプの楽器を楽器屋さんに借りてマウスピースの試奏を行い購入してください。
実は今までのマウスピースを買えるだけで音程問題がまるっと解決する事例をたくさん見てきたので、音にめっちゃくちゃに関係しています、マウスピース大事です。
最初の1本を決めるなら、「定番で基準を作る → 方向性で分けて試す → 工房系で詰める」の順番が、学生でも一般楽団でも失敗が少ないです。まずはマウスピースの取り扱いが多い店を探し、自分の楽器を持ってマウスピースを選びに行きましょう!


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