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COLUMN

もし、ユーフォニアム奏者が金属アレルギーかなと思ったら

「金属アレルギー」皆さん聞いたことありますか?
私も唇や手が荒れてきたり、指の間が痒くなったり、するとまさかな??と思うことが昔ありました。
金管奏者であるユーフォニアマーにはとっても身近で厄介な症状ですよね。

重篤なケースを除けば、原因を絞って“物理的に楽器と触れる量”を減らせていければ続けられる選択肢は作れます。絶望せずにまずは体を守りつつ、できる対策を順番にスピーディーに実行しましょう!

※もし、指導者の方がいらっしゃったらこちらの資料をご一読ください。
金管楽器マウスピースによる金属アレルギーが 原因と考えられた口腔粘膜炎の 1 例

そもそも金属アレルギーって?

一般に「金属アレルギー」と呼ばれるものの多くは、皮膚や粘膜が金属に触れたときに起きるアレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)です。原因は“金属そのもの”というより、汗や唾液などで金属が少しずつ溶け出し、体がそれを異物として覚えてしまうこと
日本アレルギー学会より引用

すっごい重要なことは「全部の金属がダメ」ではない

金属アレルギーで有名なのはニッケルですが、クロムやコバルトなども代表的な原因金属として知られています。
逆に言えば、例えば銀には反応するけど金には反応しないなど、人によって反応する金属が違います。だからこそ、自己判断よりアレルギー外来のある病院に行って、「何の金属に反応しているか」を調べるとめちゃくちゃ話がはやくなります。

ユーフォ奏者は“汗・唾液・摩擦”が絡みやすい

金管のマウスピースは唇が振動する場所なので、どうしても摩擦が起きます。DermNet(皮膚科情報サイト)でも、口元の赤み・乾燥が「アレルギーとは無関係に」摩擦で起きることがある、と説明されています。
一方で、金属アレルギーの場合は、唾液や汗がマウスピースと皮膚の間に入ることで金属が溶け出しやすくなり、アレルギーの発症に関わる、という記載もあります。

つまり、奏者は「ただ荒れた」だけなのか、「金属が原因でかぶれている」のかを切り分けるところから始まります。

スムーズに行うユーフォ奏者の金属アレルギー対策について

  • 我慢しない。あやしいならすぐに皮膚科で相談、放置するとアレルギーは重症化することがあります。
  • 「金属アレルギー=全部の金属がダメ」ではない。反応する金属は人によって違うので素材を考える。
  • 対策の基本はシンプルで、反応する種類の金属から離れ接触(+汗・唾液・摩擦)を減らすこと。
  • マウスピースも楽器本体も、代替金属や素材で優秀なものがメチャクチャがある。重篤でなければ“諦める”前に試せることが多い

それでは、具体的な対処法を説明していきます。

対処法:まず最初にやること

「原因が何か分からない」段階でも、ここだけは先にやって損がありません。

  • いったん練習量を落として、接触時間を短くする(短時間×回数のほうが安全)
  • 練習後に口周りを軽く洗って、汗や唾液を残しにくくする
  • マウスピースは毎回洗浄して乾かす(汚れが残ると刺激になりやすい)
  • かゆみや赤みが強い日は、無理に本番仕様で吹かない

接触皮膚炎の治療で大切なことは原因を見つけ出して避けることです。原因の物がどのような製品などに含まれているのか、医師の指導を受けて、しっかりと避ける必要があります。

引用元:jsaweb.jp

ここで我慢して悪化させると、復帰まで長引きやすいので、早めに手を打つのが結果的に早いです。

受診の目安と病院の選び方

まずは皮膚科が基本。原因特定にはパッチテストが重要

アレルギー性接触皮膚炎の検査で最も重要な検査法はパッチテストです。パッチテストは、十分な量のハプテン(アレルゲン)を強制的に皮膚に吸収させ、アレルギー反応を惹起させます。従って、貼布されるアレルゲンの量・濃度および溶媒となる基剤、貼布に用いるパッチテストユニット・貼布時間などが結果に影響を及ぼすため、訓練された医療従事者(皮膚科医)により行われなくてはなりません。

引用元:公益社団法人日本皮膚科学会

ようは接触皮膚炎(かぶれ)の原因を調べる検査として、パッチテストが重要です。
原因金属がわかればどう対処するべきなのかがぐっと明確になります。

すぐ中止して受診したいサイン

次のような状態なら、「様子見」より先に医療機関へ。特に呼吸が苦しい場合は緊急対応が必要です。

状態目安行動
痛みが強い、腫れが増える、膿っぽい感染の可能性早めに受診
市販薬でも良くならない原因が残っている皮膚科で相談
息苦しさがある緊急迷わず救急

引用元:Mayo Clinic

マウスピースでできる対策

金属アレルギー(疑い)の対策で、いちばん現実的で効果が出やすいのがマウスピース周りです。理由はシンプルで、唇が直接ふれる面積が大きいから。

メッキの剥がれ・ザラつきは要注意

マウスピースは、見た目がきれいでもリム周りに細かい荒れがあることがあります。
特に学校の備品では日々の割れた中の真鍮が直接出てきて唇に触れてしまうものがたくさんあります。
マウスピース変更をきっかけに口腔内の炎症が改善した症例報告もあります。
出展:金管楽器マウスピースによる金属アレルギーが原因と考えられた口腔粘膜炎の 1 例

ここで無理をすると、刺激(摩擦)が増えるうえ、下地の金属が露出している可能性も出てきます。

  • リムにザラつきがある
  • 変色が落ちない箇所がある
  • 銀が薄く見える(黄味が出る、ムラがある)
  • 唇が当たる部分だけ痛い/かゆい

このどれかがあれば、まず別の新しいマウスピースをためしてください。
例えばバックの4Gや5Gなど定番の製品はアマゾンでも気軽に購入ができます。

メッキでの対策:銀→金、ただし“下地”に注意

金メッキは、唇の当たりが滑らかに感じやすく、長時間の演奏でラクに感じる人がいます。Yamahaの解説でも、金メッキは銀より滑らかに感じることがあり、長時間の演奏で快適になり得る、また銀メッキで肌が荒れる人が金メッキで軽くなる場合がある、と触れています(ただし医師に相談を、とも書いています)。

ただし注意点がひとつ。
ニッケルアレルギーの人は、「金メッキにしたのにダメ」が起きることがあります。金や銀のメッキの下に、ニッケル系の下地(インターライナー)が使われていると反応しうる、という報告があるためです。

  • 必要なら皮膚科で原因金属を特定(パッチテスト)→その結果に合わせて選ぶ
  • 問題ない金属のメッキマウスピースを試す
  • ダメなら「ニッケル下地の有無」も疑う

今のマウスピースから変えたくない!という方はマウスピースにメッキ処理をすることも考えてもいいかもしれません。安い工房で1万円ぐらい、通常は数万程度の予算と加工期間は大体1~2週間あれば完了してくれます。
また、Bachやデニス・ウィックなどの大手マウスピースメーカーですと同じ型番の金メッキバージョンも販売していることもあります、こちらも試す価値はあるかもしれませんね。

代替素材:金属を避ける選択肢

金管奏者が金やプラスチックのマウスピースへ切り替える選択肢があることは、楽器奏者の皮膚トラブルをまとめた医学論文でも触れられています。出典:Contact dermatitis and other skin conditions in instrumental musiciansまた、非金属マウスピースは「極端な気温でも唇が痛くなりにくい」「快適に感じる人がいる」「金属で肌が荒れやすい人の選択肢になる」とYamahaも解説しています。

また、私も試しに金属で比較的反応するケースが少ないステンレス製のマウスピースを一時期使用シていたことがあります。好みもありますがダークな音がして十分使えるものでしたよ

一方で、素材を変えると“感じ”が変わることはあります。トロンボーンのポリマー(樹脂)マウスピースを、無響室で評価した研究では、倍音のエネルギーに“わずかな差”が出たと報告されています。出典:Design, Manufacturing and Acoustic Assessment of Polymer Mouthpieces for Trombones
ただ、わずかな差です。素材よりも奏者の腕前のほうが結果に大きく直結します。

接触面(メッキ)だけ変える

皮膚科のフォーラム記事(J-STAGE)では、金管楽器奏者の対処として
1)マウスピース材質の変更
2)唇が当たるリム部分をスクリューで交換
3)イオンプレーティング(表面処理)
という選択肢が整理されています。

“全部替える”より、唇が当たる部分だけ安全な素材にする発想です。予算や入手性はケースバイケースですが、「続けたい」人ほど知っておいて損はありません。

対策ねらい良いところ注意点
金メッキ唇の刺激軽減/滑り改善試しやすい、感触が変わることが多い下地のニッケルで反応する場合あり
マウスピース交換(別個体)メッキ剥がれ・荒れの回避すぐできる、原因切り分けに有効サイズも同時に変えると比較が難しい
非金属(樹脂など)金属接触をゼロへアレルギー対策の強手感触や音の差を感じる人も(わずかな差の報告あり)
スクリューリム“当たる場所”だけ素材変更口当たりを固定しやすいシステム対応が必要、入手性に差
イオンプレーティング等表面を強く/安定させる皮膚への刺激を減らす狙い施工品質・素材の確認が必要(自己流は避ける)

メッキ「音は変わる?」ってきいたから…

マウスピースを金メッキにしたら音が激変する、という話を聞くことがありますが、Yamahaでさえ「金メッキは音を変えるものではない(薄い層なので多くの奏者には問題になりにくい)」という趣旨で解説しています。出典Guide to Brass Mouthpieces, Part 4: Weights and Finishes
つまり、マウスピースのメッキ変更の目的は見た目と口当たりがほとんどで音には影響がほぼありません
わりと実験を色々なメーカーがしてて常識なのですが古い情報にしか触れていない方は
「マウスピースを金メッキにしたらダークな音になる!」と勘違いされている方も多いです。

音が変わった気がするなら、それはメッキというより

  • 口当たりの変化でアンブシュアが微妙に変わった
  • つい力みが減って息が入るようになった
  • そもそも別個体でリムや重量が違う
    こういう要素が原因であることも多いです。

楽器本体でできる対策

金属アレルギー(疑い)の対策は、結局ここに戻ってきます。

  • 皮膚に当たる
  • 汗・唾液が入る
  • 摩擦が起きる

まず“どこで反応しているか”を地図にする

ユーフォの場合、荒れやすい場所はだいたい決まっています。

  • 唇まわり:マウスピースのリム接触+唾液+摩擦
  • 左手:バルブケーシング周り(握って支える)
  • 右手:バルブボタン、指が触れる周辺
  • 左腕/前腕:ベルや管体が触れる、汗が溜まる
  • 首・顎:構え方によっては触れる(特に長時間練習)

金属は汗などで溶け出して接触皮膚炎を起こすことがある、という説明も皮膚科学会のQ&Aにあります。 出典:公益社団法人日本皮膚科学会「唇だけ」「左手だけ」など場所が偏っているなら、対策も絞りやすいです。

カバー・バリアで“直接触れない”状況を作る

やることはシンプルで、手当たり次第に買い替える前に、接触面を覆うのが先です。

  • バルブケーシングに巻くカバー(布・合皮・ネオプレーン系など)
  • 左手が当たる部分に布を巻く(練習中だけでもOK)
  • 楽器が腕に当たるなら、腕側(長袖やリストバンド)でバリアを作る
  • どうしても手が荒れるなら、左手だけ薄手手袋(バルブは素手、支える手だけ保護)

例えば握る箇所はこういった商品も販売されているので併用するのもおすすめします。


右手持ち手部分カバー
Neotech ユーフォニアム&バトン用 ブラスラップ



左の腕が当たる辺りはホルンのカバーもオススメです。
フレンチホルンハンドルガード ホーン用保護パッド

手袋・保湿はどう考える?

「手袋すれば絶対治る」とまでは言い切れません。皮膚科学会Q&Aでも、接触皮膚炎に対するバリアクリームや保湿剤、手袋の効果は“まだ明らかではない”としつつ、慢性的な石鹸などによる刺激性皮膚炎ではバリアクリームや保湿剤が予防・治療の面で推奨される、手袋も使い方(時間を短く、綿手袋を下に)で皮膚バリアの障害を防げる可能性がある、と説明しています。
ユーフォ奏者の現実解としては「汗をかく長時間練習の日だけ、支える手を守る」みたいな運用がしやすいです。

仕上げ(ラッカー/メッキ)をどう使うか

重篤でなければ、ユーフォを諦める必要はありません。
理由は、やれる手が“段階的に”いくつもあるからです。

  • 接触を減らす(カバー・手袋)
  • 当たるパーツを置き換える(マウスピース素材、部品交換)
  • 必要ならリペアで当たり面だけ処理(コーティングなど)
  • 最後に楽器の仕上げ・買い替えを検討

「銀メッキ→ラッカーの楽器に変える」という発想は、金属に直接触れない“壁”を作る考え方としては理にかなっています。ただしラッカーは消耗品で、擦れや汗で弱ることもあります。
また、これは強く言いたいのですが、自分で塗装する系は基本おすすめしません。ラッカー作業自体が危険だからです。やるなら、楽器店・修理工房に相談して安全にやりましょう。

症状の場所別:ユーフォ奏者の“当たり”と対策早見

症状が出る場所当たりやすいポイントまず試したい対策
唇(リムの形でくっきり荒れる)リム接触+唾液+摩擦 マウスピース交換/メッキ変更/代替素材(樹脂など)
左手の手のひら・親指付け根バルブケーシングを握る部分左手側だけカバー、練習日は薄手手袋
指先・右手の一部バルブボタン周り、触れる金属ボタンや触れる部分の保護、汗をこまめに拭く
前腕・肘の内側ベルや管体が当たる、汗が溜まる長袖、タオル巻き、接触部にカバー
首・顎(人による)構え方で当たる姿勢調整+当たる場所に布を挟む

まとめ:重篤でなければ、やり方はある

金属アレルギーは「かなり珍しい体質」というより、特定の金属(たとえばニッケルなど)に反応する人が一定数いる、わりと身近なものです。だから、唇や手の荒れが続いたときに「自分だけがおかしいのかな」と思う必要はありませんし、焦ってユーフォニアムを諦める必要もありません。

むしろ前向きに考えるなら、いちばん効率がいいのは“原因を当てずっぽうで推測し続ける”のをやめて、皮膚科でパッチテストなどを使って「何に反応しているのか」を一度はっきりさせることです。原因が分かれば、対策はぐっと現実的になります。マウスピースのメッキや素材を変える、当たる部分をカバーで守る、触れる時間を減らす――こうした手段を、必要なところだけ狙って選べるようになるからです。

「まずは試してみよう」と思える一歩としては、症状が落ち着いているタイミングで皮膚科に相談して、パッチテストが受けられるか聞いてみるのがいちばんです。原因が見えるだけで、気持ちも練習も戻ってきます。ユーフォを続けるための“作戦”を立てるつもりで、まずは原因特定から始めてみてください。

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